
ECサイトを新しく制作したり、受注・在庫管理まで含めて改善したりするとき、要件を満たせば補助金を活用できる可能性があります。ただし、ECサイトを作れば必ず補助対象になるわけではありません。 制度ごとに対象者、対象経費、申請方法が異なり、交付決定前の契約や支払いが対象外になることもあります。
この記事では、2026年7月23日時点の公式情報に基づき、ECサイト制作で検討しやすい「小規模事業者持続化補助金」と「デジタル化・AI導入補助金」を比較します。申請期限や公募要領は変更される場合があるため、実際に申請するときは必ずリンク先の最新情報も確認してください。
ECサイト制作に補助金は使える?
ECサイト制作に補助金を使えるかどうかは、サイトの目的と導入内容で決まります。新しい販路を開拓するためのECサイトなら小規模事業者持続化補助金、受注・在庫・顧客管理などの業務プロセスを改善する登録済みITツールならデジタル化・AI導入補助金が候補です。
一方、会社案内だけのホームページや、制度上の要件を満たさないオーダーメイド開発は対象にならない場合があります。「ECサイト制作費」という費目名だけで判断せず、何を実現するための投資か、どの経費区分に該当するかを公募要領と見積書で照合することが大切です。
補助金は制作会社への値引き制度ではありません。審査を受け、採択後に交付決定を得て、事業を完了し、実績報告が認められた後に補助額が確定します。不採択や減額もあり得るため、補助金を使えない場合でも成立するEC事業計画を先に作りましょう。
ECサイト制作で検討できる補助金2つ

国の制度でECサイトに関連しやすいのは、小規模事業者持続化補助金とデジタル化・AI導入補助金です。前者は販路開拓、後者はITツールによる生産性向上を主な目的としています。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>は、小規模事業者が経営計画に基づいて行う販路開拓などを支援する制度です。ECサイトの開発・更新、商品写真や動画の制作、効果や作業内容が明確なSEO対策などは「ウェブサイト関連費」に該当する可能性があります。
第20回公募の通常枠は補助率が原則3分の2で、補助上限は原則50万円です。インボイス特例は50万円、賃金引上げ特例は150万円が上限に加算され、両方を満たす場合は最大200万円が加算されます。ただし、ウェブサイト関連費には別途上限があるため、総額だけを見てECサイト制作費を計画しないようにしましょう。
最新の制度内容は、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>公式サイトで確認できます。
デジタル化・AI導入補助金
デジタル化・AI導入補助金の通常枠は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入し、労働生産性を高める取り組みを支援する制度です。補助率は原則2分の1以内で、一定の最低賃金要件を満たす場合は3分の2以内です。
補助額は、業務プロセスが1つ以上なら5万円以上150万円未満、4つ以上なら150万円以上450万円以下です。対象経費には、登録済みソフトウェアの購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入設定や研修、保守サポートなどが含まれます。
ただし、自由に選んだECサイト制作会社へ依頼すれば補助される制度ではありません。事務局に登録されたITツールを選び、IT導入支援事業者と共同で申請する必要があります。詳細はデジタル化・AI導入補助金の通常枠を確認してください。
自治体独自のEC支援制度も確認する
都道府県や市区町村、地域の産業振興機関が、EC導入、販路開拓、デジタル化を対象とする助成事業を募集することがあります。対象地域、募集期間、上限額が限定されるため、全国共通の制度として一律に紹介することはできません。
事業所所在地の自治体公式サイト、商工会・商工会議所、国や自治体の補助金を検索できるJグランツを確認しましょう。民間のまとめ記事だけで申請可否を決めず、必ず実施機関の公募要領に戻って確認してください。
ECサイト制作向け補助金の違いを比較
2つの制度は目的も申請方法も異なります。ECサイトを「新規顧客を獲得する販路」として作るのか、「販売や在庫管理を効率化するITシステム」として導入するのかを整理すると、候補を絞りやすくなります。
| 比較項目 | 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> | デジタル化・AI導入補助金 通常枠 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 経営計画に基づく販路開拓・生産性向上 | ITツール導入による労働生産性向上 |
| 主な対象者 | 小規模事業者など | 中小企業・小規模事業者など |
| 補助率 | 原則3分の2。赤字事業者が賃金引上げ特例を利用する場合は4分の3 | 原則2分の1以内。一定の最低賃金要件を満たす場合は3分の2以内 |
| 補助上限 | 原則50万円。特例加算あり | 1プロセス以上は150万円未満、4プロセス以上は450万円以下 |
| EC関連の考え方 | ECサイト開発・更新などをウェブサイト関連費として申請 | 登録済みITツールと関連サービスを申請 |
| 申請時の主な支援者 | 地域の商工会・商工会議所 | 登録済みのIT導入支援事業者 |
| 支払い | 事業完了・実績報告後の精算払い | 事業完了・実績報告後に補助金交付 |
金額だけで選ぶと、対象外経費を計上したり、申請目的と実際の施策がずれたりします。まず制作したいECサイトの機能、販路開拓計画、導入スケジュールを整理し、その後に制度を選びましょう。ECサイト全体の設計や制作費を先に知りたい場合は、売れるECサイト制作のコツと費用の解説も参考にしてください。
小規模事業者持続化補助金でECサイトを制作する条件

小規模事業者持続化補助金は、単なるホームページ制作費の補填ではなく、経営計画に基づく販路開拓を支援する制度です。対象経費の制限と申請手続きを確認しましょう。
ECサイト関連費だけでは申請できない
第20回公募要領では、ウェブサイト関連費だけで申請することはできません。機械装置等費、広報費、展示会等出展費、新商品開発費など、ほかの補助対象経費と組み合わせる必要があります。
たとえば、新商品の販路を広げるためにECサイトを改修し、同時にチラシを制作する計画などが考えられます。ただし、費目を形式的に追加するのではなく、各施策が経営計画とどう結び付くかを説明できなければなりません。
ウェブサイト関連費の申請上限は30万円
ウェブサイト関連費として申請できる補助金額は最大30万円(税込)です。補助対象経費そのものが30万円までという意味ではなく、補助金申請額の上限です。
また、ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の4分の1が上限です。通常枠の補助上限50万円を申請する場合、ウェブサイト関連費として計上できる補助金額は最大12万5,000円になります。特例で補助上限が引き上げられた場合でも、ウェブサイト関連費の補助金額は30万円を超えられません。
販路開拓計画と事業支援計画書が必要
申請には、自社の経営状況、顧客ニーズ、強み、販路開拓の内容、期待する効果などを整理した経営計画が必要です。さらに、所在地を管轄する商工会または商工会議所へ「事業支援計画書(様式4)」の発行を依頼します。
様式4の発行受付には申請締切より早い期限があります。直前に相談すると間に合わない可能性があるため、GビズIDプライムの取得と並行して早めに相談しましょう。
第20回の申請期限を確認する
第20回公募の申請受付開始は11月5日、申請受付締切は12月15日17時です。事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は12月4日です。
採択発表は2027年3月ごろの予定で、採択後すぐに発注できるとは限りません。採択通知の後に見積書等を提出し、交付決定を受けてから事業を開始します。急いでECサイトを公開したい場合は、補助金を待つスケジュールが適切かも検討してください。
デジタル化・AI導入補助金でECシステムを導入する条件

デジタル化・AI導入補助金は、ECサイトの見た目を整える費用ではなく、登録されたITツールを使って業務を改善する取り組みが中心です。対象ツールと申請体制を先に確認します。
登録済みのITツールを選ぶ
補助対象になるのは、事務局の審査を経て登録されたITツールです。通常枠では、顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収管理、供給・在庫・物流など、1種類以上の業務プロセスを持つソフトウェアを申請します。
導入候補が決まったら、公式のITツール検索で登録状況、対象プロセス、対象経費を確認してください。見積書に対象外の制作作業や広告費が混在していないかも分けて確認します。
IT導入支援事業者と共同で申請する
申請者だけで手続きを完結させるのではなく、登録済みのIT導入支援事業者と共同で交付申請を行います。支援事業者はITツールの提案、事業計画の策定支援、申請手続き、導入後のサポートなどを担います。
「補助金が必ず受け取れる」「採択されたら不要な機能も追加した方が得」といった説明には注意が必要です。導入目的、総額、自己負担額、保守費、補助対象外経費を見積段階で明確にしましょう。
通常のホームページ制作費が対象になるとは限らない
会社案内サイトのデザイン制作や、登録されていない完全オーダーメイドのECサイト制作が、そのまま対象になるとは限りません。制度の目的は、登録済みITツールを導入して労働生産性を高めることです。
ECカート、販売管理、在庫管理、顧客管理などを導入したい場合は候補になりますが、「ホームページを作りたい」という要望だけで制度を選ぶのは避けましょう。Shopifyを使う場合の制作会社選びは、ShopifyのECサイト制作会社10選でも解説しています。
申請スケジュールを確認する
通常枠の交付申請は3月30日に開始され、4次締切は8月25日17時です。4次締切分の交付決定は10月7日の予定です。以降の募集や日程変更は、公式サイトの事業スケジュールで確認してください。
締切までにGビズIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの宣言、IT導入支援事業者との計画作成などが必要です。ツール選定と申請準備に時間がかかるため、締切日から逆算して進めましょう。
ECサイト制作の補助金を申請する5ステップ
制度が違っても、申請前に事業目的と経費を整理し、交付決定後に発注する流れは共通しています。先に制作契約を結ばず、次の順番で準備します。
ステップ1:ECサイトの目的と必要な機能を決める
新規顧客を獲得したいのか、電話注文をECへ移行したいのか、在庫管理まで効率化したいのかを決めます。商品点数、決済方法、配送、会員機能、顧客管理、既存システムとの連携も整理してください。
ステップ2:対象になり得る補助金を選ぶ
販路開拓が中心なら持続化補助金、登録済みITツールによる業務効率化が中心ならデジタル化・AI導入補助金を確認します。自社が対象事業者に該当するか、申請枠の条件を満たすかも公募要領で確認します。
ステップ3:公式窓口と制作会社へ相談する
持続化補助金は商工会・商工会議所、デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者が主な相談先です。制作会社へは、補助金の利用希望だけでなく、公開希望日、必要機能、予算上限を伝えましょう。
ステップ4:事業計画と見積書をそろえる
申請書では、現状の課題、実施内容、成果目標、経費の必要性を一貫させます。見積書は対象経費と対象外経費を区別し、何にいくらかかるかが分かる状態にします。相見積もりが必要になる条件も公募要領で確認してください。
ステップ5:交付決定後に契約・制作を始める
申請や採択だけでは発注を始められません。原則として交付決定通知を受けてから契約、発注、支払いを行います。制作中は契約書、請求書、振込記録、納品物、画面キャプチャなど、実績報告に必要な証拠を保存してください。
ECサイト制作で補助金を使う前の注意点
補助対象に見える施策でも、発注時期や支払い方法を間違えると対象外になることがあります。制作を急ぐほど、申請と契約の順序を明確にしましょう。
交付決定前に契約・発注・支払いをしない
原則として、交付決定前に契約や発注、支払いをした経費は補助対象になりません。制作会社から着手金を求められた場合も、交付決定日より前に支払わない契約条件にできるか確認します。
補助金は後払いなので資金繰りを準備する
補助金は、事業完了後の実績報告と審査を経て支払われます。いったん制作費の全額を自社で支払う資金が必要です。入金時期が遅れたり、一部経費が認められず補助額が減ったりする場合も想定してください。
同じ経費を別の補助金と重複申請しない
同一内容の経費に国の補助金を重複して充てることはできません。ECカート利用料、制作費、商品撮影費などを複数制度へ分けて申請する場合も、経費と成果物が重なっていないか事務局へ確認しましょう。
証拠書類と公開後の運用記録を残す
補助事業では、見積書、契約書、請求書、支払い記録、納品物、成果が分かる資料などを提出・保存します。ECサイトを公開しただけで終わらず、計画した販路開拓や生産性向上につながったかを測定できるようにします。
補助金の採択はゴールではありません。売上、購入率、客単価、受注処理時間など、ECサイト導入後の成果を測る仕組みまで制作計画に含めることが重要です。
補助金を使う場合と使わない場合の判断基準
補助金は自己負担を抑えられる一方、申請、審査、実績報告に時間がかかります。公開時期と投資効果を比較し、自社に合う進め方を選びましょう。
補助金の利用が向いているケース
次の条件に当てはまる場合は、補助金を利用するメリットが大きくなります。
- 公募の目的とECサイト導入の目的が一致している
- 交付決定まで制作開始を待てる
- 制作費をいったん全額支払える
- 経営計画、見積書、実績報告を準備できる
- 補助金が不採択でも事業計画を見直して実行できる
補助金を待たずに進める方がよいケース
一方、次の場合は通常の制作契約で早く進めた方が、機会損失を抑えられることがあります。
- 新商品発売などで公開期限が決まっている
- 必要なECサービスや制作内容が補助対象に該当しない
- 申請・報告に使う社内時間の方が大きい
- 小規模に公開して売上を確認しながら改善したい
- 審査結果にかかわらず、すぐに販売開始する必要がある
| 判断軸 | 補助金を使う | 補助金を使わない |
|---|---|---|
| 制作開始 | 原則として交付決定後 | 契約後すぐに進めやすい |
| 費用 | 対象経費の一部が補助される可能性 | 全額自己負担 |
| 手続き | 申請・実績報告・証拠保存が必要 | 通常の制作契約と運用 |
| 計画変更 | 公募要領や承認手続きの制約を受ける | 事業判断で変更しやすい |
| 向いている状況 | 制度目的と計画が合い、日程に余裕がある | 早期公開や柔軟な改善を優先する |
ECサイト制作の補助金に関してよくある質問
ここでは、ECサイト制作で補助金を検討するときによくある疑問に回答します。個別の申請可否は、最新の公募要領と各事務局の回答を優先してください。
ECサイト制作費は全額補助されますか?
全額は補助されません。制度ごとに補助率、補助上限、対象経費の制限があり、対象外経費や自己負担が発生します。また、採択されても実績報告で経費が認められなければ、申請時より補助額が減る場合があります。
個人事業主でも申請できますか?
各制度の対象要件を満たす個人事業主は申請できる可能性があります。ただし、業種ごとの従業員数、所在地、確定申告、納税、GビズIDなどの要件を確認する必要があります。
Shopifyで作るECサイトも補助対象になりますか?
Shopifyを使うという理由だけで対象になるわけではありません。持続化補助金では販路開拓計画とウェブサイト関連費の条件、デジタル化・AI導入補助金では登録済みITツールかどうかなどを確認します。テーマ購入費、アプリ利用料、制作作業費を分けて見積もると確認しやすくなります。
採択前に制作会社へ相談してもよいですか?
相談や見積もり取得は可能ですが、交付決定前の契約、発注、支払いは対象外になるのが原則です。制作会社には補助金の利用予定を伝え、着手時期と支払い条件を確認してください。
どの補助金を選べばよいか分からない場合は?
最初にECサイトの目的、必要機能、公開希望日を整理してください。その上で、持続化補助金は地域の商工会・商工会議所、デジタル化・AI導入補助金は登録済みIT導入支援事業者へ相談します。税理士や行政書士などへ申請支援を依頼する場合は、対応範囲と報酬も事前に確認しましょう。
まとめ:補助条件を確認してECサイト制作計画を立てよう
ECサイト制作で検討できる代表的な制度は、小規模事業者持続化補助金とデジタル化・AI導入補助金です。販路開拓が中心か、登録済みITツールによる業務改善が中心かによって、適した制度が変わります。
補助率や上限額だけでなく、対象経費、申請期限、交付決定後の発注、後払いの資金計画まで確認することが重要です。まずは補助金がなくても成立するEC事業計画を作り、そのうえで利用できる制度を選びましょう。
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