大企業からベンチャーへ移籍して約8ヶ月。実際に中に入ってみて直面したのは、想像を遥かに超える組織のスピード感という、ベンチャーのリアルな洗礼だった。
「とにかく変化が激しいんです。社内で使っている外部ツールに少しでも不便があれば、次の瞬間には『じゃあこれ、社内でシステムを作っちゃいましょう』となって一瞬で切り替わる。前例を重んじる大企業にいた身からすると、そのスピード感は刺激的であると同時に、正直、たまに怖くなる瞬間すらあります(笑)。人によっては、この目まぐるしさがネックになるかもしれません」
しかし、これこそが赤坂が入社以来、仕事において「本当に求めていた環境」であり、最大のやりがいだった。
「何も変わらない場所に留まって、淡々と時代に取り残されていく恐怖に比べたら、大変であっても、こうしてどんどん変化にチャレンジしていける環境の方が圧倒的に健全だし、何より働いていて面白い。目まぐるしい変化を『刺激』として楽しみながら打席に立てていること自体が、今、仕事をしていて一番嬉しい部分ですね」
一方で、そうした変化への強さは、組織の柔軟な「働き方の設計」にも現れている。国立にある自宅からオフィスまでは片道1時間半。往復3時間の通勤負担に、入社3ヶ月目で体調を崩した際、彼は代表の松岡に現状をストレートに相談した。プロパゲートとしての対応は一瞬だった。
「松岡さんはその場で『じゃあ、週2リモートにしましょう』と言ってくれた。ルールに人間を当てはめるのではなく、成果を出すための最適解を優先して即座に仕組みを書き換えてくれる。おかげで体調は劇的に改善しましたし、保育園から帰ってきた子供や妻と平日に夕飯を食べられるようにもなりました。このスピード感と柔軟性があるからこそ、安心して目の前の仕事に100%コミットできています」
後日、代表の松岡にもこの判断について話を聞いた。プロパゲートでは、正社員については基本的に出社を前提としている。顔を合わせることで生まれる情報量や、現場の熱量を重視しているからだ。
ただし、赤坂の場合は例外だった。「赤坂さんに関しては、リモートワークであっても出社時と同じ水準でパフォーマンスを発揮できるという信頼がありました。だから、週2リモートという判断をしました」そう松岡は語る。
つまりこれは、単なる温情でも、その場の勢いで決めた特別扱いでもない。赤坂が日々の仕事を通じて積み上げてきた信頼があり、その信頼を前提に、会社として最も合理的な働き方を選択したということだ。
ルールを守るために人を苦しめるのではなく、成果を出すためにルールを更新する。そこには、プロパゲートという組織の思想がよく表れている。そして赤坂自身もまた、その自由を「権利」としてではなく、「成果で返すべき信頼」として受け止めている。柔軟な働き方は、甘さではない。むしろ、信頼を得た人間にだけ与えられる、より高い責任でもある。
大企業時代に感じていた「前例がないからできない」という壁。そこから抜け出した先で、赤坂は今、「成果のためなら仕組みを変える」というまったく逆の文化の中にいる。その変化こそが、彼にとってプロパゲートへ移籍した意味の一つなのかもしれない。